2025年2月10日、東京都庁で開催された「東京の雇用就業を考える有識者会議(第4回)」に、株式会社ローランズ代表取締役の福寿がゲストスピーカーとして講演しました。
●会議の様子は、東京都産業労働局YouTubeチャンネルでご覧いただけます。
●当日の会議資料はこちらからご覧いただけます。
東京の雇用就業を考える有識者会議(第4回)
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/plan/yuushikisya_kaigi/04/index.

講演内容
ローランズについて
株式会社ローランズは、主に花屋事業を展開しており、現在 原宿店・HARUMI FLAG店・天王洲アイル店の3店舗を運営しています。このうち、HARUMI FLAG店と天王洲アイル店は 東京都のソーシャルファームの認証、予備認証を受け障害者をはじめとした就労困難者が、他の従業員と共に働く環境を整えています(HARUMI FLAG店は2025年に認証、天王洲アイル店は2025年に予備認証)。
東京都は、ソーシャルファームの創設や活動の促進に向けて取り組んでいます。ソーシャルファーム認証についてはこちらをご参照ください。
https://www.social-firm.metro.tokyo.lg.jp/social-firm/abouts
ローランズでは、業務を細分化し、各工程ごとに専門性を高めながら、段階的にスキルアップを図る手法を採用しています。通常の花屋業務は3工程程度に分かれますが、ローランズでは 10工程程度 に細分化。これにより、1人で全ての業務を担う必要がなくなり、複数の専門スタッフが協力することで生産性の向上につながっています。
ウィズダイバーシティ有限責任事業組合について
ローランズで実践していた「1人でやらない、みんなでやる」というコンセプトを中小企業の障害者雇用に応用させたのが、ウィズダイバーシティ有限責任事業組合(以下、「ウィズダイバーシティ」)の取り組みです。
企業の障害者雇用を取り巻く現状としては、日本では働ける年齢の障害者のうち、約365万人が未就労とされています。
厚生労働省東京労働局「令和6年障害者雇用の集計結果」では、従業員数が多い1000人以上の事業所の雇用率は2.6%だったものの、従業員数が少なくなるほどこの割合が下がり、100人未満では0.92%でした。
したがって、企業規模が小さい中小企業ほど、障害者雇用が進んでいないといえます。中小企業は障害者雇用を進めたくても、環境整備や仕事の切り出しが課題です。
ウィズダイバーシティは、法定雇用率の算定特例制度を活用し、同じ組合に参加する障害福祉団体への発注を通じて、障害者雇用をつくる仕組みです。上図のうち、緑色の枠中にある中小企業は、経済活動に必要なサービス・商品(花、植栽、レンタルアート等)を定期的に組合内の障害者福祉団体に発注します。中小企業は販路拡大や仕事の確保には強みがありますが、障害者雇用に向けた環境整備に課題があります。
対して、障害者福祉団体は障害者の採用や育成、配慮のある環境整備に強みがあるものの、ビジネスセクターの経験豊富なスタッフが少ないことが多く、販路拡大に課題があります。組合に参加することで、組合内の中小企業から定期的な業務発注につながり、障害者雇用を増やすことができます。
このように、お互いの強みを生かして、「障害者雇用は1社でやらない、みんなでやる」という仕組みが、ウィズダイバーシティです。
これまでウィズダイバーシティには15社の企業(うち3社が障害福祉団体)が参加し、日本一の企業連携数になっています。
複数の障害福祉団体が組合に参加することで、仕事を発注する側の中小企業に対し、豊富なサービスラインナップを提供できます。現在、ウィズダイバーシティでは60以上のサービス項目から発注内容を選定できます。
また、障害福祉団体で働くスタッフは、中小企業から様々な仕事が集まることで、自身の障害の特性に合わせた業務を選びやすくなります。結果ウィズダイバーシティでは、これまで27名の福祉サポートが必要な障害者雇用を創出し、就業経験を積むことで福祉サポートを卒業し一般企業に就職したスタッフを32名生み出しました。
最後に、働くことを通じて、障害の有無に関わらず人々が共生すること、障害者法定雇用制度はそのためのきっかけづくりであることを皆さまにお伝えしたいです。算定特例制度を活用したこのウィズダイバーシティの仕組みが、中小企業における障害者雇用の0.5歩の仕組みとしてご理解をいただけますと幸いです。
東京労働局より
福寿の発表のあと、本有識者会議の委員である、富田東京労働局長より、東京都の障害者の雇用状況等について報告がありました。
出典:東京労働局提出資料より
東京都は法定雇用率の達成企業割合が30.5%と、全国水準(46.0%)より低水準。これは東京都に中小企業が多く割合を引き下げている要因となっています。
法定雇用率算定特例のうち「事業共同組合等」には、有限責任事業組合(LLP)が含まれ、令和6年6月1日現在では、全国でまだ9組合だけが認定されています。東京都は(今回ゲストスピーカーとして参加した福寿が発起人となっている)ウィズダイバーシティのみで、全国で認定第1号です。
富田委員からは「障害者の雇用の安定と促進を確実に達成できるよう、組合全体で取り組むことが有効である場合にはご活用いただきたいと思う」というご発言もありました。
主な質疑応答
当日出席された委員の皆様からは、次のような質問をいただきました。このレポートでは抜粋してお伝えします。
Q:算定特例制度を活用した事業協同組合等は全国に9つありますが、東京都はウィズダイバーシティのみです。こういうことが変わればもっとこの仕組みが広まると思うことはありますか。
福寿:有限責任事業組合をつくるうえでは、障害者雇用に長けた事業者がどのように中心的な役割を果たして、組合をつくっていくかが課題ではないかと考えています。東京都ではまだウィズダイバーシティのみですので、この活動の認知度を上げていくことも頑張っていきたいと考えています。
Q:中小企業から組合に参加している障害福祉団体へ業務を切り出すのがポイントだと思いますが、どのようにされているのでしょうか。
福寿:ウィズダイバーシティでは、中小企業へご提供できるサービスラインナップを一覧表にしてご提示しています。ラインナップをお示しすることで、どういう仕事であれば切り出せそうか一緒に設計しやすくなっていると思います。
※詳細な質疑応答の内容は、後日東京都HPに公開される議事録をご参照ください。
会議の最後に、福寿から以下のコメントを述べました。
・社会課題は様々な要因が絡み合っているので、制度としてわけてしまうのは少々もったいないと感じることもあります。制度が複雑であるため、もう少し統括するような制度があるとよいのではと感じます。
・障害者雇用施策は障害者手帳を保有している方に対する支援になりますが、東京都のソーシャルファーム認証は手帳を持っていない方でも対象になります。特に、今日の有識者会議でも取り上げられたビジネスケアラーの人は、なかなか支援の対象になりづらいという現状があります。
・障害者雇用では障害者手帳を持っている方だけでなく難病の方やシングルマザーの方も対象になるなど、法定雇用率を上げるだけではなく、対象となる方も広がる形が国全体でもあるとよいのではと考えます。